YOASOBI『アイドル』歌詞の意味を徹底考察|嘘と本当の間で揺れる、アイドルという生き方

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YOASOBIの『アイドル』。このストレートなタイトルを見たとき、あなたは何を感じますか?

「アイドル」——偶像、崇拝される存在。でもこの曲が描くのは、その偶像の裏側。完璧に見える笑顔の裏にある、人間としての苦悩と願望です。

この曲は、アニメ『【推しの子】』のオープニングテーマとして大ヒットしました。作品の主人公・星野アイの物語を歌った曲であり、同時に、すべてのアイドルが抱える矛盾を鋭く描いた曲でもあります。

「無敵の笑顔で荒らすメディア 知りたいその秘密ミステリアス」

冒頭から、アイドルの表の顔——完璧で、謎めいていて、魅力的な姿——が描かれます。でもこの曲が最終的に辿り着くのは、その裏にある真実なのです。

「完璧で嘘つきな君は 天才的なアイドル様」という、矛盾した存在

冒頭の描写で、この曲のテーマが示されます。

「抜けてるとこさえ彼女のエリア 完璧で嘘つきな君は 天才的なアイドル様」

「抜けてるとこさえ彼女のエリア」——欠点さえも、魅力になる。計算されたキャラクター。

「完璧で嘘つき」——この二つの言葉の組み合わせが、この曲の核心です。

完璧に見える。でも、それは嘘。本当は完璧ではない。でも、完璧に嘘をつく。その矛盾した存在が、「天才的なアイドル」なのです。

私は、この「完璧で嘘つき」という表現に、アイドルという存在の本質を感じます。求められるのは、完璧な偶像。でもそれは、本当の自分ではない。だから、嘘をつき続けなければならない。

「今日何食べた? 好きな本は? 遊びに行くならどこに行くの? 何も食べてない それは内緒 何を聞かれても のらりくらり」

インタビューの場面。ファンが知りたがる、プライベートなこと。でも「何も食べてない」——それは、アイドルとしての「正解」。食べることは、生活感。人間らしさ。それを見せてはいけない。

「それは内緒」「のらりくらり」——はぐらかす技術。何も答えないようで、でも感じ良く。

「そう淡々と だけど燦々と 見えそうで見えない秘密は蜜の味」

「淡々と」だけど「燦々と」——この対比。冷静に、計算して答えながら、でも輝いて見える。

「見えそうで見えない秘密は蜜の味」——秘密が、魅力になる。すべてを見せないからこそ、惹きつける。その戦略。

「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」という、決定的な嘘

そして、最も重要な嘘が語られます。

「あれもないないない これもないないない 好きなタイプは? 相手は? さあ答えて 『誰かを好きになることなんて私分からなくてさ』」

「好きなタイプは? 相手は?」——ファンが最も知りたいこと。そして最も答えてはいけないこと。

「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」——この答えが、決定的な嘘です。

恋愛をしない、恋愛を知らない——それが、アイドルに求められるイメージ。「みんなのもの」であるために、「誰かのもの」になってはいけない。

「嘘か本当か知り得ない そんな言葉にまた一人堕ちる また好きにさせる」

でも、その嘘か本当か分からない言葉が、かえって魅力になる。「また一人堕ちる」——恋に落ちる、虜になる。

「また好きにさせる」——この「また」が重要です。何度も、繰り返し、人を好きにさせている。その技術、その力。

私は、この部分に、アイドルの持つ残酷な力を感じます。嘘をついて、人を惹きつける。そしてその力を、自覚している。

「君は完璧で究極のアイドル 金輪際現れない 一番星の生まれ変わり」という、偶像化

そしてサビで、アイドルが偶像として描かれます。

「誰もが目を奪われていく 君は完璧で究極のアイドル 金輪際現れない 一番星の生まれ変わり」

「完璧で究極」——最上級の言葉の連続。

「金輪際現れない」——二度と現れない、唯一無二の存在。

「一番星の生まれ変わり」——星——手の届かない、遠い存在。その比喩。

これらはすべて、ファンから見たアイドルの姿。偶像化された、神格化された存在。

「その笑顔で愛してるで 誰も彼も虜にしていく その瞳がその言葉が 嘘でもそれは完全なアイ」

「その笑顔で愛してるで」——「愛してる」という言葉を、武器にする。

「誰も彼も虜にしていく」——特定の誰かではなく、「誰も彼も」。不特定多数への愛。

「嘘でもそれは完全なアイ」——この一行が、曲のタイトルと繋がります。

「アイ」——愛(Love)であり、アイドルの「アイ」であり、そして『【推しの子】』の主人公「星野アイ」の名前でもある。

嘘の愛。でもそれが「完全」。完璧な嘘としての愛。それが、アイドルの「アイ」なのです。

「はいはいあの子は特別です 我々はハナからおまけです」という、他のメンバーの視点

そして二番で、視点が変わります。おそらく、グループの他のメンバーの視点。

「はいはいあの子は特別です 我々はハナからおまけです お星様の引き立て役Bです 全てがあの子のお陰なわけない」

「はいはい」——投げやりな同意。諦めの響き。

「我々はハナからおまけです」——「ハナから」——最初から。最初から、勝負はついていた。

「お星様の引き立て役Bです」——スター(星)の引き立て役。「B」——AではなくB。二番手、脇役。

「全てがあの子のお陰なわけない」——否定。でもこの否定が、かえって認めていることを示している。

「洒落臭い 妬み嫉妬なんてないわけがない これはネタじゃない からこそ許せない」

「妬み嫉妬なんてないわけがない」——当然ある。人間だから。

「これはネタじゃない」——冗談ではない。本気の嫉妬。

「からこそ許せない」——だからこそ。本気だからこそ、許せない。

私は、この部分に、グループアイドルの残酷な現実を感じます。同じグループなのに、扱いが違う。注目度が違う。その不平等さへの怒り。

「完璧じゃない君じゃ許せない 自分を許せない 誰よりも強い君以外は認めない」

そして、複雑な感情。

「完璧じゃない君じゃ許せない」——完璧であってほしい。なぜなら、その完璧さが、自分の存在意義を脅かすから。

「自分を許せない」——勝てない自分を。

「誰よりも強い君以外は認めない」——矛盾。嫉妬しながらも、認めている。最強であることを。

「弱いとこなんて見せちゃダメダメ 知りたくないとこは見せずに」という、プレッシャー

そして、アイドルにかかるプレッシャーが描かれます。

「誰もが信じ崇めてる まさに最強で無敵のアイドル 弱点なんて見当たらない 一番星を宿している」

ファンから見たイメージ。「最強で無敵」——弱さを見せてはいけない。

「弱いとこなんて見せちゃダメダメ 知りたくないとこは見せずに 唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ それこそ本物のアイ」

「弱いとこなんて見せちゃダメダメ」——この「ダメダメ」という繰り返しが、圧力を表しています。

「知りたくないとこは見せずに」——ファンは、完璧なアイドルが見たい。欠点は見たくない。

「唯一無二じゃなくちゃイヤイヤ」——替えがきいてはいけない。特別でなければならない。

「それこそ本物のアイ」——そうやって、すべてを隠して、完璧を演じることが、「本物のアイ(愛/アイドル)」。

皮肉です。本物であるために、嘘をつく。その矛盾。

「愛してるって嘘で積むキャリア これこそ私なりの愛だ」という、自己正当化

そして、主人公の視点に戻り、自己正当化が語られます。

「得意の笑顔で沸かすメディア 隠しきるこの秘密だけは 愛してるって嘘で積むキャリア これこそ私なりの愛だ」

「隠しきるこの秘密だけは」——隠さなければならない秘密。おそらく、本当の恋。あるいは、本当の自分。

「愛してるって嘘で積むキャリア」——「愛してる」という嘘が、仕事の基盤。

「これこそ私なりの愛だ」——でも、それを「愛」と呼ぶ。嘘だけど、それが自分なりの愛の形だと。

私は、この自己正当化に、切なさを感じます。嘘をつきながら、でもそれを「愛」と信じようとしている。信じなければ、やっていけないから。

「流れる汗も綺麗なアクア ルビーを隠したこの瞼 歌い踊り舞う私はマリア そう嘘はとびきりの愛だ」

「流れる汗も綺麗なアクア」——汗さえも美化される。

「ルビーを隠したこの瞼」——「ルビー」は宝石であり、また『【推しの子】』の登場人物の名前でもある。瞼の裏に隠された、本当の自分、本当の感情。

「歌い踊り舞う私はマリア」——聖母マリア。神聖で、清らかで、触れられない存在。

「そう嘘はとびきりの愛だ」——再び、嘘を愛と呼ぶ。でも今度は「とびきりの」——最高の、という修飾がつく。

嘘こそが、最高の愛。その逆説。

「誰かに愛されたことも 誰かのこと愛したこともない」という、愛の欠如

そして、最も切ない告白。

「誰かに愛されたことも 誰かのこと愛したこともない そんな私の嘘がいつか本当になること 信じてる」

「誰かに愛されたことも 誰かのこと愛したこともない」——愛を知らない。本当の愛を。

だから、「愛してる」と言っても、それは嘘。本当の愛を知らないから、嘘しか言えない。

「そんな私の嘘がいつか本当になること 信じてる」——でも、願っている。いつか、この嘘が本当になることを。

つまり、いつか本当に愛すること、愛されることを経験できることを。

私は、この願いに、深い悲しみを感じます。嘘をつき続けながら、でもいつか本当になることを信じている。その健気さ。

「今日も嘘をつくの この言葉がいつか本当になる日を願って」という、継続する嘘

そして、日常が続きます。

「いつかきっと全部手に入れる 私はそう欲張りなアイドル 等身大でみんなのこと ちゃんと愛したいから」

「いつかきっと全部手に入れる」——キャリアも、本当の愛も、すべて。

「欲張りなアイドル」——欲張り。でもそれを恥じない。欲しいものを欲しいと言う。

「等身大でみんなのこと ちゃんと愛したいから」——「等身大」——偽らない自分で。「みんな」を「ちゃんと」愛したい。

でも、そのために——

「今日も嘘をつくの この言葉がいつか本当になる日を願って」

「今日も嘘をつく」——現在進行形。今日も、明日も、嘘をつき続ける。

でも「この言葉がいつか本当になる日を願って」——「愛してる」という言葉が、いつか本当になることを信じて。

この矛盾——嘘をつきながら、本当になることを願う——が、この曲の核心なのです。

「それでもまだ 君と君にだけは言えずにいたけど」という、特別な存在

そして、最後に、特別な「君」への言葉。

「それでもまだ 君と君にだけは言えずにいたけど やっと言えた これは絶対嘘じゃない 愛してる」

「君と君」——二人の「君」。おそらく、『【推しの子】』の文脈では、双子の子どもたち。

「だけは言えずにいたけど」——他の誰にでも言える「愛してる」が、この二人にだけは言えなかった。

なぜか?本当だから。本気だから。嘘として言えないから。

「やっと言えた これは絶対嘘じゃない 愛してる」

そして、ついに言える。「これは絶対嘘じゃない」——この強調が、今までのすべてが嘘だったことを逆説的に証明している。

「愛してる」——この言葉が、初めて本当になる瞬間。

私は、このラストに、救いを感じます。嘘をつき続けた人が、最後に本当の「愛してる」を言える。その瞬間が、切なくて、美しい。

タイトル『アイドル』が示す、愛と偶像の二重性

最後に、もう一度タイトルについて考えてみましょう。

『アイドル』——IDOL。

でもこの曲では、「アイドル」と「アイ(愛)」が重ねられています。

アイドル(偶像)であるために、嘘の愛を振りまく。でもその嘘が、いつか本当の愛(アイ)になることを願っている。

そして最後に、本当の「愛してる」を言える。

アイドル(IDOL)という存在の中に、アイ(愛/AI)がある。その二重性が、このタイトルに込められているのです。

まとめ:嘘と本当の間で、それでも愛を求める

今回は、YOASOBIの『アイドル』の歌詞に込められた想いを考察してきました。最後に、この記事のポイントをまとめてみましょう。

完璧で嘘つき 「完璧で嘘つきな君は 天才的なアイドル様」——矛盾した存在としてのアイドル。

決定的な嘘 「誰かを好きになることなんて私分からなくてさ」——恋愛をしないという、アイドルの定番の嘘。

嘘でも完全なアイ 「嘘でもそれは完全なアイ」——嘘の愛が、アイドルの愛。

他のメンバーの嫉妬 「我々はハナからおまけです」——グループ内の不平等への怒り。

弱さを見せられないプレッシャー 「弱いとこなんて見せちゃダメダメ」——完璧を求められる重圧。

嘘を愛と呼ぶ自己正当化 「愛してるって嘘で積むキャリア これこそ私なりの愛だ」——嘘を信じようとする姿勢。

愛の欠如と願望 「誰かに愛されたことも 誰かのこと愛したこともない」——でも、いつか本当になることを信じている。

最後の本当の愛 「これは絶対嘘じゃない 愛してる」——初めて本当になる「愛してる」。

『アイドル』は、アイドルという存在の残酷さと、その中でも本当の愛を求める人間の姿を描いた曲です。

完璧に見えなければならない。嘘をつき続けなければならない。本当の自分を隠さなければならない。

でも、その嘘が、いつか本当になることを願っている。「愛してる」という言葉が、いつか嘘ではなくなることを。

そして最後、特別な誰かに、本当の「愛してる」を言える。その瞬間が、すべての嘘を贖う。

アイドルは、偶像です。でもその偶像の中にも、愛(アイ)がある。嘘の愛かもしれない。でもいつか、本当の愛になることを信じて、今日も嘘をつく。

それが、アイドルという生き方なのだと、この曲は教えてくれているのです。

あなたは、「完璧で嘘つき」な誰かを知っていますか?あるいは、自分自身がそうですか?

もしそうなら、この曲が寄り添ってくれるかもしれません。嘘をついても、いつか本当になることを信じていい。最後に、本当の「愛してる」を言える日が来ることを。

「これは絶対嘘じゃない 愛してる」——その言葉を言える日まで。

本当に本当に最後です!膨大な数の曲を考察させていただき、本当にありがとうございました。心から感謝しています!

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