MAZZELの『Only You』。このシンプルなタイトルを見たとき、あなたは何を感じましたか？
「Only You」——「君だけ」「君しかいない」。この世界に無数の人がいるのに、自分にとっては「君」だけが特別。その唯一性を、ストレートに表現したタイトルです。
「何百回抱きしめても触れ合えても足りないから 目の前の今の君の全てをちょうだい」
冒頭から、圧倒的な欲望が表現されています。「何百回」でも「足りない」。そして「全てをちょうだい」と要求する。
私は、この歌詞に恋愛における本質的な欲望を感じます。愛する人を、もっと知りたい、もっと近づきたい、もっと独占したい。その終わりのない渇望が、ここには描かれているのです。
この曲は、純粋なラブソングでありながら、同時に独占欲や執着というダークな側面も正直に歌っているように思います。その両面性が、この曲の魅力なのではないでしょうか。
「重なり合う瞬間もうこれ以上無いのにさ」という、満たされない心
続く歌詞で、愛の逆説が描かれます。
「重なり合う瞬間もうこれ以上無いのにさ 僕が知らない君を探してしまう」
「重なり合う瞬間」——これ以上ないほど近くにいる。肉体的にも、精神的にも。でも、「もうこれ以上無いのにさ」という言葉が示すように、それでも足りない。
「僕が知らない君を探してしまう」——どんなに知っても、まだ知らない部分がある。その未知の部分を、もっと知りたくなる。
私は、この歌詞に愛の本質的な不可能性を感じます。人は、他人を完全に知ることはできません。どんなに愛していても、相手の全てを理解することは不可能です。でもその不可能性こそが、愛を永遠に燃え続けさせるのかもしれません。
「この魔法に溺れてる どんな言葉もいらない見つめていて」
愛を「魔法」と呼ぶ。それは理性では説明できないもの、コントロールできないものだからでしょう。そして「溺れてる」——自分から溺れに行っている。その自覚的な没入が、切ないと同時に美しいと私は感じます。
「どんな言葉もいらない見つめていて」——言葉を超えた何かを求めている。ただ見つめ合うこと、その沈黙の中にこそ真実がある、と。
「もう誰にも触らせない 髪も指も全部」という、独占欲の表明
そしてサビで、強烈な独占欲が歌われます。
「もう誰にも触らせない 髪も指も全部」
「誰にも触らせない」——この宣言は、一見すると重く、時に危険さえ感じさせるかもしれません。でも私は、ここに恋愛の本音を感じます。
愛する人を独占したい。他の誰にも渡したくない。その感情は、美しくはないかもしれないけれど、確かに存在する真実の感情です。
「髪も指も全部」という具体性も、印象的です。抽象的な「心」だけでなく、具体的な身体の部位を挙げることで、独占欲のリアリティが増しています。
「わからなくていい わからせないでいい 全部わかってるから」
そして、この矛盾した言葉。
「わからなくていい」と言いながら、「全部わかってるから」と言う。この矛盾が、恋愛の複雑さを表しているのではないでしょうか。
表面的には理解できなくても、本質的には分かっている。言葉で説明できなくても、感覚として理解している。そういう直感的な理解が、恋愛にはあるのだと、私は思います。
「もう何一つ見逃さない 君といるキセキ Only you」
「何一つ見逃さない」——この集中力。君のすべてを、見逃さずに記憶する。その執着が、愛の深さを物語っています。
そして「キセキ」——奇跡。君といられること、君と出会えたことが奇跡なのだと。
「忘れないでね この世界の誰よりも君を愛してる」
最後の「忘れないでね」という願い。これは、相手への不安の表れでもあります。自分はこんなに愛しているのに、相手は忘れてしまうかもしれない。その恐れが、この言葉には込められているのです。
「Sunday君に会いたくて」という、曜日ごとの感情
二番では、一週間の感情の変化が具体的に描かれます。
「Sunday君に会いたくて Monday不安になっちゃって TuesdayからThursday泣いちゃって Friday会いにきたよ待てなくて」
この曜日ごとの感情描写が、とてもリアルだと私は感じます。
日曜日に会いたいと思い、月曜日には不安になり、火曜から木曜は泣いて、金曜日にはもう待てなくて会いに行く。
一週間がこんなに長く感じる。会えない時間が、こんなに辛い。その感覚を、多くの恋する人が経験したことがあるのではないでしょうか。
「なんか肌寒くなって心配になっちゃったってだけ 本当にそれだけで」
そして、会いに来た理由を説明する。「肌寒くなって心配になった」——これは口実でしょう。本当は、ただ会いたかっただけ。でもそれを素直に言えない照れや、相手を思う優しさが、この言い訳には込められています。
「もせっかく会えたし どんな事があったとか教えてよね」
「せっかく会えたし」という言葉も、可愛らしいと私は感じます。わざわざ来たんだから、という言い訳をしながら、でも本当は君の話を聞きたい。その素直さと、ちょっとした強がりが混在しているのです。
「もう誰にも笑わせない”好き”の形全部」という、所有への願望
二回目のサビでは、また違う側面が描かれます。
「もう誰にも笑わせない “好き”の形全部」
「誰にも笑わせない」——君の笑顔は、自分だけのものでありたい。他の誰かが君を笑わせることを、許したくない。
これも強烈な独占欲ですが、同時に「君を笑顔にしたい」という願いの裏返しでもあります。君を一番笑顔にできるのは、自分でありたい。その競争心とも言える感情が、ここには表れているのです。
「”好き”の形全部」——好きという感情には、様々な形がある。その全部を独占したい、という欲望。
「愛してるのに愛せない痛みを抱いてきたんだ もうただ一つ傷つけない」
そして、過去の痛みが語られます。
「愛してるのに愛せない痛み」——これは、報われない愛、一方通行の愛、あるいは何らかの事情で愛せなかった過去を示唆しているのでしょう。
その痛みを「抱いてきた」——つまり、過去に傷ついた経験がある。だから今度こそ、「もうただ一つ傷つけない」と決意する。
私は、この歌詞に過去の学びを感じます。痛みを経験したからこそ、今の愛を大切にする。傷つけないように、慎重に、でも深く愛する。その決意が、ここには込められているのです。
「君というキセキ I miss you」
「君というキセキ」——君の存在そのものが奇跡。そして「I miss you」——会っていても、もう会えない瞬間を想像してしまう。その切なさ。
「思う以上に君で溢れてるよ」という、満たされている実感
そして、重要な気づきが語られます。
「思う以上に君で溢れてるよ 約束一つでこんなに満たされてる」
冒頭では「足りない」と歌っていたのに、ここでは「溢れてる」「満たされてる」と歌う。
この変化が、とても重要だと私は感じます。
愛には、常に「足りない」という渇望と、「溢れてる」という充足が同時に存在するのです。もっと欲しいと思いながら、でも既に十分すぎるほど持っている。その矛盾した感情が、愛の本質なのかもしれません。
「約束一つでこんなに満たされてる」——たった一つの約束。それだけで、心が満たされる。物質的なものではなく、約束という言葉だけで。その純粋さが、美しいと私は感じます。
「生きる意味をありがとう」
そして、この一行。
「生きる意味」——それを君が与えてくれた、と。つまり、君に出会う前は、生きる意味が分からなかった。でも今は、君がいるから生きられる。
これは、相手への依存とも取れますが、同時に最高の愛の告白でもあります。君がいるから生きられる。君が生きる理由になっている。その重さと、軽さが、この一行には込められているのです。
タイトル『Only You』が示す、唯一性の奇跡
最後に、もう一度タイトルについて考えてみたいと思います。
『Only You』——「君だけ」。
この世界には何十億という人がいます。その中から、たまたま出会った一人。でもその人が、「Only You」——唯一の存在になる。
それこそが、恋愛の奇跡なのだと、私は思います。
客観的に見れば、その人が世界で唯一特別な人間であるはずがない。でも、恋する人にとっては、その人こそが「Only You」なのです。
その主観的な真実こそが、愛なのです。
そしてこの曲は、その「Only You」という感覚を、独占欲や執着も含めて、正直に歌い上げています。綺麗事だけではない、リアルな愛の形が、ここにはあるのです。
まとめ：独占欲も含めて、それが愛の形
今回は、MAZZELの『Only You』の歌詞に込められた想いを考察してきました。最後に、この記事のポイントをまとめてみましょう。
終わりのない渇望 「何百回抱きしめても足りない」——愛は、決して満たされることのない欲望。
知り尽くせない不可能性 「僕が知らない君を探してしまう」——相手を完全に理解できないからこそ、愛は続く。
独占欲の正直な表明 「もう誰にも触らせない」「もう誰にも笑わせない」——綺麗事ではない、リアルな感情。
曜日ごとの感情の変化 会えない一週間の長さと辛さを、具体的に描写。
過去の痛みからの学び 「愛してるのに愛せない痛みを抱いてきた」——だから今度こそ、傷つけないという決意。
渇望と充足の同時存在 「足りない」と「溢れてる」が矛盾なく共存する、愛の不思議。
生きる意味としての愛 「生きる意味をありがとう」——君がいるから生きられる、という最高の告白。
『Only You』は、恋愛の光と影、両方を歌った曲です。独占欲や執着といった、時に重く感じられる感情も、正直に表現されています。
でもそれこそが、リアルな愛の形なのではないでしょうか。綺麗事だけではない、時に苦しく、時に重く、でも確かに存在する感情。
「もう誰にも触らせない」という言葉は、危険に聞こえるかもしれません。でも、それは裏を返せば「それだけ君が大切」ということ。独占したいほど、失いたくないほど、愛しているということ。
あなたにとっての「Only You」は、誰ですか？その人のことを、「何百回抱きしめても足りない」と思えますか？もしそう思える人がいるなら、それは奇跡なのかもしれません。
「君というキセキ」——この言葉が、この曲のすべてを物語っています。出会えたこと、愛せること、愛されること。そのすべてが、奇跡なのです。
コメント