あいみょんの『マリーゴールド』。2018年のリリース以来、結婚式の定番曲となり、カラオケでも歌われ続けるこの曲を、あなたは誰かを思い浮かべながら聴いたことがありますか？
多くの人がこの曲を「甘いラブソング」として受け止めていますが、私は歌詞をじっくり読み込むたびに、そこに描かれているのは決して順風満帆な恋愛ではないと感じるのです。
「風の強さがちょっと 心を揺さぶりすぎて」
冒頭から、どこか不安定で、揺れ動く感情が表現されています。そして、
「でんぐり返しの日々 可哀想なふりをして だらけてみたけど」
という言葉には、恋する相手の前で強がったり、弱さを隠したりする、不器用な自分の姿が投影されているのではないでしょうか。
この記事では、『マリーゴールド』の歌詞に込められた、切なくも美しいメッセージを、一つひとつ丁寧に読み解いていきます。なぜタイトルが「マリーゴールド」なのか、その答えもきっと見えてくるはずです。
なぜ「マリーゴールド」なのか？花言葉から読み解く深い意味
まず考えたいのは、なぜこの曲のタイトルが『マリーゴールド』なのか、ということです。
バラでも、ひまわりでもなく、マリーゴールド。
マリーゴールドの花言葉を調べてみると、「変わらぬ愛」「健康」といったポジティブなものもありますが、実は「嫉妬」「絶望」「悲しみ」といったネガティブな意味も持っているのです。
私は、あいみょんがあえてこの花を選んだのは、恋愛の光と影、両方を表現したかったからではないかと思います。
「麦わらの帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる」
この歌詞で描かれる恋人の姿は、夏の日差しの中で揺れる、明るく眩しいマリーゴールドのようです。しかし同時に、マリーゴールドが持つ「儚さ」や「揺れ動く不安」も、この恋には確かに存在しているのではないでしょうか。
完璧な恋なんてない。幸せの中にも不安があり、光があれば影もある。そんな「リアルな恋」を歌うために、あいみょんはマリーゴールドという花を選んだのだと、私は感じています。
「希望の光は目の前でずっと輝いている」に込められた強さ
この曲の中で、私が最も心を打たれるのが、
「でんぐり返しの日々 可哀想なふりをして だらけてみたけど 希望の光は 目の前でずっと輝いている」
という部分です。
「でんぐり返しの日々」というのは、毎日がくるくると回転するような、目まぐるしくて不安定な日常を表しているのでしょう。そんな中で「可哀想なふり」をしたり、「だらけて」みたり。きっと、恋する相手に本当の自分を見せられない葛藤があったのかもしれません。
でも、そんな暗い気持ちの中でも、「希望の光は目の前でずっと輝いている」と歌うのです。
この「希望の光」とは何でしょうか？
私は、それが恋する相手そのものであり、同時に「今、ここにいる幸せ」なのだと思います。どんなに不安でも、どんなに自分が弱くても、大切な人が隣にいてくれる。その事実こそが、何よりも強い希望なのではないでしょうか。
あいみょんは、決して「完璧に幸せです」とは歌いません。弱さも不安も抱えたまま、それでも「幸せだ」と宣言する。その等身大の強さが、この曲の最大の魅力だと私は感じています。
「アイラブユーの言葉じゃ足りない」という究極の愛の表現
サビで繰り返される
「ああ アイラブユーの言葉じゃ 足りないからとキスして」
というフレーズも、とても印象的です。
「アイラブユー」という世界共通の愛の言葉でさえ、自分の気持ちを表現するには足りない。だから言葉ではなく、キスという行為で伝える——。
これは、言葉にできないほどの深い愛情を表現していると同時に、どこか切なさも感じさせます。
言葉では伝えきれない想いがある、ということは、裏を返せば「本当の気持ち全部 吐き出せるほど強くはない」という歌詞とも繋がってきます。
不器用で、弱くて、でも必死に愛を伝えようとする。そんな姿が、多くの人の心に刺さるのではないでしょうか。私たちの誰もが、完璧には愛を表現できないからこそ、この歌詞に共感してしまうのだと思います。
「雲のような優しさ」が象徴する、包み込む愛
もう一つ、私が美しいと感じるのが、
「雲のような優しさでそっとぎゅっと 抱きしめて」
という表現です。
「雲のような優しさ」——なんて詩的で、温かい言葉でしょうか。
雲は形を変えながら、空にふわりと浮かんでいます。柔らかくて、包み込むようで、でもどこか掴みどころがない。そんな雲に優しさを例えるセンスに、私はあいみょんの言葉選びの巧みさを感じます。
「そっとぎゅっと」という、一見矛盾するような表現も絶妙です。優しく、でもしっかりと。相手を傷つけないように、でも離さないように。その繊細なバランスが、この言葉から伝わってくるのではないでしょうか。
そして歌詞は続きます。
「雲がまだ2人の影を残すから いつまでも いつまでも このまま」
雲が影を作るのは、太陽の光があるから。つまり、2人の関係が光に照らされている、幸せな時間であることを示しているのでしょう。でも雲の影は、やがて流れて消えていきます。だからこそ「いつまでも」と願う気持ちが、切なく響くのです。
「遥か遠い場所にいても繋がっていたい」に見る、恋の不安と祈り
曲の終盤で歌われる
「遥か遠い場所にいても 繋がっていたいなあ 2人の想いが 同じでありますように」
というフレーズには、この曲全体を貫く「不安」が凝縮されているように思います。
ここまで幸せを歌ってきた曲なのに、なぜ「遥か遠い場所」という言葉が出てくるのでしょうか？
それは、どんなに愛し合っていても、いつかは離れなければならない時が来るかもしれない、という予感があるからではないでしょうか。物理的な距離だけでなく、心の距離が離れてしまうことへの不安も、そこには含まれているのかもしれません。
「2人の想いが同じでありますように」という祈りのような言葉も、裏を返せば「もしかしたら同じではないかもしれない」という怖れの表れです。
私はこの部分を聴くたびに、完璧な恋愛なんてないのだと改めて感じます。どんなに愛していても、不安はなくならない。でもその不安を抱えながらも、「繋がっていたい」と願い続けることが、本当の愛なのかもしれません。
まとめ：完璧じゃない恋だからこそ、心に響く
今回は、あいみょんの『マリーゴールド』の歌詞に込められた想いを考察してきました。最後に、この記事のポイントをまとめてみましょう。
マリーゴールドという花に込められた二面性 明るさと影、幸せと不安。両方を併せ持つマリーゴールドが、リアルな恋愛を象徴しています。
弱さを隠さない等身大の愛 「本当の気持ち全部吐き出せるほど強くはない」と認めながらも、「希望の光は輝いている」と歌う強さが、多くの人の共感を呼んでいます。
言葉にできない想いを行動で示す 「アイラブユーの言葉じゃ足りない」からキスをする。不器用でも、必死に愛を伝えようとする姿が美しいのです。
不安を抱えながらも願い続ける勇気 「遥か遠い場所にいても繋がっていたい」という祈りは、完璧ではない恋だからこその切実さがあります。
あいみょんが描く恋愛は、決してキラキラした理想の物語ではありません。弱さも、不安も、全部含めた「本当の恋」です。だからこそ、私たちの心にこんなにも深く響くのではないでしょうか。
この曲を聴いて、あなたの「心のずっと奥の方」には、どんな想いが浮かんできますか？ぜひもう一度、大切な人のことを思いながら、『マリーゴールド』を聴いてみてください。
コメント