1.はじめに:フジファブリックが描く、ファンタジックな逃避
フジファブリックの『銀河』は、2004年にリリースされた、志村正彦さんの初期の名曲の一つです。
この曲を初めて聴いたとき、その独特な世界観とポップな躍動感に心を奪われた方も多いのではないでしょうか。
私がこの曲に惹かれるのは、現実と幻想の境界が曖昧な、夢のような情景を描いているからだと感じます。
特に印象的なのが、
「U.F.Oの軌道に乗ってあなたと逃避行」
というフレーズ。
UFOという非現実的な存在を持ち出すことで、この曲全体が「現実逃避」のファンタジーとして成立しているように思います。
そして、
「タッタッタッ タラッタラッタッタッ」
という、言葉にならない躍動感。
この記事では、『銀河』の歌詞に込められた深い意味を、一つひとつ丁寧に読み解いていきます。
志村正彦さんが描いた、二人だけの逃避行の世界を、一緒に探っていきましょう。
2.「真夜中二時過ぎ二人は街を逃げ出した」──非日常への脱出
この曲は、冒頭から「逃避」というテーマを明確に提示しています。
私としては、この歌詞は「日常からの解放を求める若者の衝動」を描いているのではないかと思います。
「真夜中二時過ぎ」という時間設定が、とても象徴的ですね。
深夜2時は、日付が変わり、街も静まり返る時間。現実の世界が眠りにつき、非現実の世界が始まる境界のような時間帯ではないでしょうか。
「二人は街を逃げ出した」という表現も興味深いと思います。
「街を出た」ではなく「街を逃げ出した」──この「逃げ出した」という言葉に、何か追われているような切迫感、あるいは抑圧からの解放という意味が込められているように感じます。
街は、日常の象徴であり、社会のルールや常識が支配する場所。そこから「逃げ出す」ことは、そうした束縛からの脱出を意味しているのかもしれません。
そして「二人」という設定。一人ではなく、二人で。
この「二人」という関係性が、この曲全体に温かさと共犯者的な親密さを与えているのではないでしょうか。
3.「タッタッタッ」という擬音が生む躍動感
この曲の最も特徴的な要素が、言葉ではない擬音の反復だと私は思います。
私としては、この擬音は「言葉にできない高揚感」や「走る足音のリズム」を表現しているのではないかと感じます。
具体的な歌詞ではなく、音だけで表現するという選択が、とても面白いですね。
「タッタッタッ」という音は、走る足音のようにも聞こえますし、心臓の鼓動のようにも聞こえます。
言葉にできない、でも確かに感じる何か──興奮、期待、ドキドキする感覚。それを、この擬音で表現しているのではないでしょうか。
また、「タッタッタッ」から「パッパッパッ」へと変化する点も興味深いと思います。
「タッタッタッ」は走る音、「パッパッパッ」は息を吐く音、あるいは何かが弾ける音のように感じられます。
丘に到着して白い息を吐く──その変化を、擬音の変化で表現しているのかもしれません。
この言葉にならない感覚を、音だけで伝えようとする試みが、この曲に独特の躍動感とポップさを与えているように思います。
4.【核心】「U.F.Oの軌道に乗って」──現実からの解放願望
この曲の核心は、「UFO」という非現実的な存在を使った逃避のファンタジーにあると私は感じます。
私としては、ここで歌われているのは「現実世界の重力から解放されたい」という願望と、「二人だけの世界を作りたい」という純粋な想いではないかと思います。
UFOは、地球の常識や物理法則を超越した存在の象徴です。
「U.F.Oの軌道に乗って」というフレーズには、現実の制約から解放され、自由に空を飛びたいという願望が込められているのではないでしょうか。
そして「あなたと逃避行」という言葉。
「逃避行」という表現が、とてもロマンティックでありながら、どこか切実な響きも持っていると感じます。
二人で現実から逃げる──それは、社会の常識や周囲の目、あるいは日常の退屈さから逃れることを意味しているのかもしれません。
「夜空の果てまで向かおう」という続きも美しいですね。
「夜空の果て」とは、どこなのでしょうか。それは物理的な場所ではなく、想像の中にしか存在しない、理想の場所なのだと思います。
この曲全体が、実際にUFOに乗るという現実的な話ではなく、「そうだったらいいな」という願望のファンタジーとして描かれているように感じます。
5.「きらきらの空がぐらぐら動き出している」──世界が変容する瞬間
この部分は、現実と幻想の境界が揺らぐ、幻想的な瞬間を描いていると私は思います。
私としては、ここで歌われているのは「世界の見え方が変わる瞬間」、つまり恋や興奮によって現実が非現実に変容する体験ではないかと感じます。
「きらきらの空がぐらぐら動き出している」という表現が、とても印象的ですね。
「きらきら」という美しい輝きと、「ぐらぐら」という不安定な動き。この対比が、興味深いと思います。
星空は本来、静かに輝いているものです。でも、興奮や高揚感の中では、まるで動き出しているように見える──そんな錯覚を表現しているのではないでしょうか。
恋をしているとき、あるいは何か強い感情に捕らわれているとき、世界はいつもとは違って見えます。
静止しているはずのものが動いて見えたり、普通の景色が特別なものに見えたり。
「確かな鼓動が膨らむ」という続きの言葉も、心臓の高鳴りを表しているように感じます。
興奮、期待、恋心──そうした感情によって、世界そのものが変容する。この曲は、そんな主観的な体験を描いているのではないでしょうか。
6.「夜空の果てまで向かおう」──二人だけの世界への憧れ
この曲の根底にあるのは、「二人だけの世界」への強い憧れだと私は感じます。
私としては、ここで歌われているのは「誰にも邪魔されない、二人だけの特別な時間と空間」への願望ではないかと思います。
「夜空の果て」という表現が、何度も繰り返されます。
「果て」というのは、終わりであり、限界であり、そしてその先にある未知の領域でもあります。
私は、これが「誰も来ない場所」「誰も知らない場所」を意味しているのではないかと思います。
二人で、誰にも邪魔されない場所へ行きたい。日常から遠く離れた、特別な場所で、二人だけの時間を過ごしたい。
そんな純粋な願望が、「夜空の果て」という幻想的な言葉に込められているように感じます。
また、「U.F.Oの軌道に沿って流れるメロディーと」という歌詞も印象的です。
UFOの軌道に沿って流れるメロディー──それは、この逃避行そのものが音楽のように美しく、リズミカルであることを示唆しているのかもしれません。
二人の逃避行は、単なる逃げではなく、一つの美しい物語、一つの歌なのだと。
7.まとめ
今回はフジファブリックの『銀河』の歌詞について、その深い意味を考察してきました。
最後に、この記事のポイントを簡潔にまとめてみましょう。
①深夜の脱出は非日常への入口
「真夜中二時過ぎ」という時間設定が、日常と非日常の境界を象徴しているように思います。
②擬音が表現する言葉にできない高揚感
「タッタッタッ」という音が、興奮や躍動感を直接的に伝えているのではないでしょうか。
③UFOは現実からの解放の象徴
地球の重力や常識から解放されたいという願望が、UFOという比喩に込められているように感じます。
④世界が変容する主観的体験
「きらきらの空がぐらぐら」という表現に、恋や興奮によって世界の見え方が変わる瞬間が描かれているのだと思います。
⑤二人だけの世界への憧れ
「夜空の果て」は、誰にも邪魔されない理想の場所の象徴ではないでしょうか。
志村正彦さんが描いたこの曲は、現実と幻想の間を自由に行き来する、ポップで夢のような逃避行の物語だと私は感じます。
この記事を読んで、改めて『銀河』を聴き直したくなった方もいるかもしれませんね。
夜空を見上げて、星々の輝きを感じながら、この曲に耳を傾けてみてください。
きっと、あなたも「夜空の果て」へと向かいたくなるはずです。


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